東京工業大学 大学院総合理工学研究科 浅田雅洋研究室

 東京工業大学には東京都目黒区の大岡山キャンパスと横浜市緑区のすずかけ台キャンパスがある。 すずかけ台には学部を持たない大学院大学である総合理工学研究科があり、浅田研究室はこの中の物理電子システム創造専攻に所属している。しかし、研究の大部分は大岡山にある量子ナノエレクトロニクス研究センターの実験設備を用いて行われている。ここには電子ビーム露光装置をはじめとして半導体極微細加工プロセスの装置が充実しており、浅田研究室ではこれらを駆使して、テラヘルツデバイスの実現を目指した研究を行っている。

 テラヘルツ帯は光と電波の中間の未開拓領域で、固体の発振・増幅・検出素子で満足なものはまだほとんどない。また、半導体などのナノ構造がこのような超高周波に対してどのように応答するかはまだ十分にわかっているとはいえない。本研究室では、ナノ構造中に生じる新しい量子効果のテラヘルツ応答特性、そしてそれを利用したテラヘルツ増幅素子・発振素子を研究している。

 最近の研究成果として、ナノ構造の一つである共鳴トンネルダイオードに微細スロットアンテナを集積し、1THzの高調波発振を達成した(下図)。これは、高調波発振とはいえ、現在ある単体電子デバイスの室温発振としては最高周波数である。構造の最適化により、基本波発振でも1THzを十分に越える見通しが得られており、この実現に向けてデバイス作製中である。

 このほかに、三端子のテラヘルツ増幅素子を目指して、2次元電子ガスの速度変調による半導体クライストロンや、テラヘルツデバイス用材料として有望と考えられる金属/絶縁体/半導体の極微ヘテロ接合の研究を行っている。
URL:http://www.ep.titech.ac.jp/staff2005/asada.pdf
(専攻ページ内)およびhttp://www.pe.titech.ac.jp/AsadaLab/Asada_Lab.html (研究室)


テラヘルツ発振を達成した共鳴トンネルダイオードRTD(上)とスペクトル(下)
  金属/絶縁体/半導体量子構造の結晶成長