東北大学 電気通信研究所 尾辻泰一・末光哲也研究室

 本研究室では、ミリ波・テラヘルツ波帯の技術を開拓・実用化するために、本領域で動作する新しい電子デバイスおよび回路システムの創出と、それらの情報通信・計測システムへの応用に関する研究開発を行っている。

 ミリ波・テラヘルツ波帯電子デバイス・回路システムの研究開発に関しては、第一に、半導体ヘテロ接合構造に発現する2次元プラズモンの共鳴効果という新しい動作原理に立脚した、周波数可変で光波との同期が可能な集積型のコヒーレント電磁波発生・信号処理デバイスの研究開発を進めている。電子デバイスにおける走行時間限界と光子デバイスにおけるフォノン散乱限界を同時に克服するブレークスルーとして注目している。

 第二に、サブ波長領域に局在した低次元プラズモンの分散特性を電子的光学的に制御することによって、ミリ波テラヘルツ波帯での複雑な信号処理機能を果たす新規な回路機能システムの創出に関する研究開発を進めている。これらのミリ波・テラヘルツ波帯デバイス・回路の応用として、新しい情報通信・計測システムの開拓に向けて、テラヘルツ帯を中間周波数帯として利用する次世代光パケット交換方式や光・ミリ波リンクシステムの研究、およびミリ波・テラヘルツ波帯時間分解電磁界計測システムの研究を行っている。

 最近の成果として、GaAs系へテロ接合材料によるプラズモン共鳴フォトミキサーデバイスの試作状況を紹介する。図1に試作デバイスの断面写真を示す。2重回折格子型ゲートおよびITOミラーによる縦型共振器の独自構造を導入することによって、プラズモン励起効率と電磁波放射利得の向上が図られ、テラヘルツ帯電磁波放射の室温動作に初めて成功した。図2に代表的な電磁波放射スペクトルを示す。図3には、テラヘルツ帯電磁波放射の測定に用いた電気光学サンプリングシステムを紹介する。その他、フーリエ変換サブミリ波分光システムやミリ波ベクトルネットワークアナライザを備えている。数値解析・モデリングから設計・製造・評価まで、一貫した研究開発を推進している。
URL→http://www.otsuji.riec.tohoku.ac.jp/

 


図1 プラズモン共鳴フォトミキサー


図2 試作素子の電磁波放射スペクトル


図3 電気光学サンプリングシステム

文責 尾辻 泰一