理化学研究所 フロンティア研究システム テラヘルツ光研究プログラム

 テラヘルツイメージング研究チーム

 理化学研究所ではこれまで、仙台・フォトダイナミクス研究センターの光発生・計測研究チーム及び埼玉県・和光本所の川瀬独立主幹研究ユニットにおいて、テラヘルツ波発生と応用研究が進められて来た。これらのアクティビティが統合・発展する形で2005年10月よりフロンティア研究システムの5年プログラム(テラヘルツ光研究プログラム)が仙台でスタートした。同プログラムは理研仙台の3研究室で構成される。波長可変光源の研究開発を行なうテラヘルツ光源研究チーム、量子カスケードレーザー等の次世代型半導体光源の研究開発を担うテラヘルツ量子素子研究チーム、そして、検出と応用の研究開発を進めるテラヘルツイメージング研究チームである。イメージングチームでは、センシング・イメージング・応用研究を基軸として、テラヘルツ分野の科学・技術・応用の確立を目指して研究を進めている。最近の主たる成果としては、封筒中の禁止薬物等の検査システムの開発、高感度のアレイ型超伝導テラヘルツ検出デバイスの開発、分光イメージングとケモメトリクスを利用したガン病理組織診断技術の研究などが挙げられる。


図1 封筒検査のためのスクリーニング部(手前)と分光検査部(右端)

 封筒中の禁止薬物等の検査システムの開発では、文部科学省科学技術振興調整費のプロジェクトの一環として、特に封筒中の禁止薬物の非開披検知を目的として、疑わしい封筒を選別するスクリーニング部と薬物同定を行なう分光検査部の開発と現場利用の検討を関係機関と共同で進めている(図1)。高感度の超伝導検出器アレイの開発では、超伝導トンネル接合素子を利用した直接検出型の6×6素子アレイを作製している(図2)。また、国立天文台と共同で、南米チリのALMA望遠鏡サイトに置かれたASTE望遠鏡にこの素子を搭載した実験もスタートさせている。さらに、テラヘルツ波吸収体で発生する高周波フォノン検出を利用した新たな広帯域検出デバイス開発も進めている。

 医学応用研究では、肝癌の病理切片のテラヘルツ分光イメージングデータにケモメトリクスの主成分分析とクラスタ分析を組み合わせた解析を適用し、ガン病変部位の自動識別の検証を行っている。このような手法は、ガン診断のみならず他の様々な解析にも利用可能と期待される。また、気体の分光的研究、フォトニック結晶を利用したセンシング、レーザーテラヘルツ放射顕微鏡などの研究のほか、企業等との共同研究も推進しており、基礎科学から応用にわたって研究開発を進めている。


図2 6×6素子の超伝導テラヘルツ
検出アレイ

図3 ケモメトリクスを利用した肝癌病理切片の
テラヘルツ波診断結果

文責 大谷 知行
http://www.riken.jp/lab-www/THz-img/