福井大学 谷・山本研究室

 昨年4月に、谷と山本はそれぞれ教授,准教授として福井大学・遠赤外領域開発研究センター(以下,遠赤センター)に着任しました。大阪(二人は阪大レーザー研・萩行研究室に所属していた)から福井に来たのはつい昨日のことのように思いますが,はや1年が経過しました。我々の研究室紹介のまえに,まず研究室が所属する遠赤センターの紹介をさせていただきます。遠赤センターは福井大学の共同教育研究施設として平成11年度に設立され,高出力テラヘルツ波光源としてGyrotronの開発とその応用を中心に研究を進めています。現在,遠赤センターには谷・山本を含め教員8名(客員等は除く),技術職員4名,ポスドク2名,事務職員1名,大学院生11名,4年生16名が所属し,地方大学にあっては比較的大きなセンターと言えると思います。Gyrotron関連の大学研究拠点としてはおそらく日本唯一で,世界で初めて1THzを超える高周波数でのGyrotron発振を成功(H17年度)させ,Gyrotronを光源に用いたESR分光,動的核偏極による増強NMR計測,高品位セラミック焼結,など様々な応用研究を活発に展開しています。つい先月ですが,遠赤センターの出原敏孝特任教授,小川勇教授,光藤誠太郎教授が平成21年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞(研究部門)」を「高出力テラヘルツ光源−高調波ジャイロトロンの研究」業績によって受賞されました。

 さて,谷・山本研究室ではフェムト秒レーザー等を励起源に用いたテラヘルツ波の発生とその分光・計測等への応用研究を行っています。電子レンジを超える出力を誇るGyrotronの研究・開発とは違い,レーザーで発生できるテラヘルツ波のパワーはせいぜいサブmW,通常ではμWレベルです。それでも,テラヘルツ時間領域分光法といわれる手法を用いると検出感度は高く,スペクトルのピークパワー換算のダイナミックレンジで6桁を超える信号対雑音比を得ることができます。現在取り組んでいる主なテーマは

・新奇な光伝導アンテナ(テラヘルツ波発生兼検出素子)の開発,光伝導アンテナの効率化 の研究
・テラヘルツ波の偏光分光法の研究
・新しいサンプリング法によるテラヘルツ時間領域分光法の高速化
・生体分子や有機薄膜のテラヘルツ分光(時間領域分光法およびテラヘルツ帯コヒーレントラマン分光法による)
・イオン液体等,溶液系のテラヘルツ分光
・癌組織などのテラヘルツイメージング

などです。共同研究にも積極的に取り組んでおり,例えば「癌組織のテラヘルツイメージング」は福井大工学部電気・電子工学科福井研(山本の学科所属研究室)と福井大医学部の三好憲雄先生との共同研究ですが,その他にも,学内および他大学・企業の研究グループとの共同研究を複数実施しています。昨年は異動直後で装置の立ち上げと環境整備で手一杯でしたが,今年度は4月に着任した古屋岳特命助教授,クリストファー・ケ研究員,および4月の新配属で人数が倍増した学生ら(現在11名:うち4年生8名,大学院生が3名)とともにステップアップした研究活動を展開していきたいと考えています。

 なお,谷・山本研究室では博士前後期課程の大学院生(福井大工学研究科物理工学あるいは電気・電子工学専攻への入学者)を募集しています。また遠赤センターGyrotronグループではポスドク(1~2名)を募集中です。ご興味をお持ちの方はぜひご一報ください。 (文責 谷正彦・山本晃司,http://fir.fir.fukui-u.ac.jp/index.html)

遠赤センターのメンバー(2008年7月,遠赤センター前で撮影)